第10回
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最優秀賞
さあ飲もう在宅ワーク切り上げて
小林由美(大阪府 女性 59)作者コメント在宅ワークにもメリットとデメリットがあります。普段着で猫を撫でながら、気ままにパソコンに向かえるのがメリット。反対に、上司や同僚の目がないので、どこで切り上げていいのかわからないのがデメリットでしょうか。すぐにパソコンをオフにして、「さあ飲もう」と自分に甘くなってしまい、反省しています。それでもやっぱり今日もまた、日の暮れないうちから缶チューハイの誘惑と闘っております。とにかく一日も早いコロナの収束を願うばかりです。
渡辺氏選評二年近くにわたるコロナ禍で、リモートワークもすっかり定着してきました。会議も連絡もパソコンの画面越し。社員食堂のランチも、同僚とのたわいないおしゃべりもない家での仕事。炎天下の外回りや満員電車に揺られての通勤さえも懐かしい。さあ、そろそろ終業時刻。早くこの作業を終わらせておいしいお酒を飲もう。実感とともに、前向きな気持ちが伝わる一句。
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優秀賞
酩酊度ちゃんと伝わるオンライン
木立慈雨(宮城県 男性 60)作者コメント全国に散らばる仲間とソウルバンドをやってますが、コロナ禍で練習も演奏もできず、オンライン飲み会だけになりました。互いの酒自慢・つまみ自慢は恒例のことです。注いだり注がれたりは無いし、画面以外が見えないので、飲んでいる量は分かりません。しかし、会話の内容が不明瞭になるのと反比例して、鼻歌やらスキャットやらとともに、互いの音楽愛と酩酊度だけは確実には伝わってきました。
渡辺氏選評こちらも定着してきたオンライン飲み会。背景に凝ったり写真や動画を挟んだり、ZOOMの使い方もそろそろ堂に入ってきました。しかし、画面越しでもあんまり酔っぱらうのは見苦しい。ほらほら、そこのあなた、もう顔が真っ赤。呂律もちょっと怪しいですよ。こちらも今の時代ならではの一句でした。
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灘五郷賞
帰れない故郷の地酒取り寄せる
しゃんしゃん(大阪府 女性 51)作者コメントコロナ禍で故郷に帰れず。ずっとコロナ対策や行動制限で神経すり減らしての生活です。もうこれ以上の気を遣うのが嫌で、完全に収まってから長距離移動をしたい。だから、私は故郷の地酒と好物でひとり家飲みしています(決して飲み過ぎてません!)。この度は素敵な賞を有難うございます。コロナコロナで疲れ果て、どんよりした心が晴れました。あとはコロナ終息に向け頑張り続ける。もうそれしかないですね。
渡辺氏選評長引くコロナ禍で県を跨ぐ移動を避けるようになり、もう二年。お取り寄せやネットショッピングもすっかり定着してきました。足が遠のいた故郷からも地酒をお取り寄せ。今夜は存分にふるさとを思いながら飲みましょう。しみじみとした味わいのある一句です。
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優秀賞
くたびれたヒールを脱いでワンカップ
佐藤暁音(京都府 女性 -)作者コメント働く女性のリアルというか、自分自身も働いています。着飾って外の自分を装っていますが、クタクタになってやっとの帰宅。このコロナ禍でもっぱらの家飲みにホッと素の自分に戻る瞬間、お酒を片手にひと息ついた後、次は晩御飯の支度に取りかかるんですが、伍魚福さんのおつまみがあれば、贅沢な家飲み時間になって、また明日からも頑張れます!。ありがとうございます。
渡辺氏選評今日は子連れでお買い物。混雑を避けて短時間で…と思っても、なかなかそうはいかない。何度言っても子供はすぐマスクを外しちゃうし、目を離すと勝手にどこかへ行っちゃうから気が抜けない。ああ、もう足がむくんでる。このヒール、そろそろ新調しようかなあ。家に着いたら、冷えたワンカップでも飲んで、明日への英気を養ってください。
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伍魚福賞
温存の高級珍味期限切れ
奥野順子(愛知県 女性 66)作者コメント高級珍味が手に入ると、普段に食べるのも何かもったいない気がして、ひとまず保管。今度、みんなが集まった時に食べようと思ってしまう貧乏性です。もちろん賞味期限はしっかり確認した上でです。ところが、つい存在を忘れてしまい、思い出した時には悔しいことになっていたという体験を句にしました。
山中勧伍魚福社長選評私も大事に飲もうと取っておいた秘蔵の日本酒が、熟成酒になってしまうことがよくあります(苦笑)。珍味の賞味期限は「おいしく食べられる期限」です。開封前なら期限が過ぎても安全に食べられますが、なるべく早くお召し上がりください!
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佳作
飲ませろと 遺影の父の 声がする
稲岡俊一(東京都 男性 77) -
佳作
オンライン話つづかぬ父子(おやこ)酒
上垣哲也(兵庫県 男性 59 -
佳作
家で飲む不要不急の酒だから
小坂武弘(京都府 男性 76) -
佳作
家飲みで 厳格になる 休肝日
モンちゃん(東京都 女性 47) -
佳作
妻と距離置いて飲んでるホームバー
大阪のアン(大阪府 男性 79) -
入選
ボクんちの 大黒柱は 酒の呼吸
めけ子(群馬県 女性 58) -
入選
テレビ前 監督になる 3杯目
ふ~つかよ~い(兵庫県 男性 51) -
入選
家飲みが社会貢献になる時代
まどかパパ(兵庫県 男性 39) -
入選
ズーム飲み 初めて気付く 父母の老い
スケダラ(神奈川県 男性 30) -
入選
認知症のふりをしてもう一杯
板垣宏(群馬県 男性 64) -
入選
灯り消しグラスに月を浮かべ飲む
岡本ユウコ(大阪府 女性 69) -
入選
一升瓶 片手で持つんだ わが娘
宮本慎治(愛知県 男性 49) -
入選
酎ハイも 妻も我が家は ストロング
逆ペリカン(大阪府 男性 39) -
入選
満天の星と飲んでる余白の図
みんせい(茨城県 男性 74) -
入選
「もう終わり」 ラストオーダー 告げる妻
日高 裕太郎(東京都 男性 32) -
入選
カシューナッツ噛む備長炭の夜
今井亜紀(大阪府 女性 40) -
入選
「パパみたい」 頬赤く染め 雪と笑む
うーるちゃん(埼玉県 男性 32) -
入選
父の日の 空の酒瓶 捨てられず
佐藤しお(神奈川県 女性 62) -
入選
哀愁に浸るつもりが酒浸り
山内祐佳(京都府 女性 53) -
入選
長すぎる 開会式に 切れる酒
松永智文(愛知県 男性 38) -
入選
お供えは 自分の飲みたい ワンカップ
ぼんくら(兵庫県 女性 41) -
入選
巣ごもりの夢は飲み屋を駆け巡る
嶋田眞(奈良県 男性 74) -
入選
ベランダで 隣の旦那と 無言酒
松沢明彦(神奈川県 男性 60) -
入選
月見酒あとは日暮れを待つばかり
小見伸雄(滋賀県 男性 51) -
入選
武勇伝二杯目からは無観客
けろね(大阪府 男性 75) -
入選
川床だ 足をバケツへ 冷酒飲む
てるちゃん(神奈川県 女性 40) -
入選
アクリル板 はさんで向こうは 大吟醸
カジ(東京都 男性 74) -
入選
冷や酒で仏に乾杯風の盆
泰平楽(神奈川県 男性 74) -
入選
珍しい 娘の酌は インスタ用
清詞薫(三重県 男性 68) -
入選
整然と煩悩ならぶ冷蔵庫
西秋じゅん(千葉県 男性 49) -
入選
コロナ禍は川柳ひねって一人飲み
渡辺柳山(千葉県 男性 70) -
入選
マスクない 自由な口に 芋焼酎
絵のイルカ(長野県 男性 42) -
入選
家飲みもスマホ放さぬ今の世は
宮本緑(兵庫県 女性 69) -
入選
アクリル板 孫の工作 兼ねている
中村利之(大阪府 男性 77) -
入選
ライト消し お月見してる 粋な酒
かた こるよ(茨城県 女性 36) -
入選
播くクダも オンラインなら 聞き流し
閑居庵(福岡県 男性 73) -
入選
俺だって 酒税で五輪の スポンサー
ひよこ(長崎県 女性 29) -
入選
誕生日 父の日還暦 全て酒
日本酒党(岐阜県 女性 31) -
入選
金メダル 取るたびビール ねだる父
桜小町(神奈川県 女性 30) -
入選
地球儀と飲みて気分は独裁者
齋藤敏也(秋田県 男性 53) -
入選
伍魚福よ同い年かと杯を上げ
伍魚福よ同い年かと杯を上げ -
入選
伍魚福 5回言えたら まだシラフ
PAPANDA(広島県 男性 64) -
入選
伍魚福は 珍味五輪の 金メダル
中山清(熊本県 男性 48) -
入選
暖簾下げ 店主が店で 家飲みじゃ
四元義朗(兵庫県 男性 60) -
入選
つまみ見て 妻の機嫌が すぐ分かる
肥後幸男(鹿児島県 男性 67) -
入選
家飲みのピクトグラムを思案する
ゴエモン(神奈川県 男性 58) -
入選
嫁のアテ 菜っぱばっかり わし山羊か
うさぎ作家(大阪府 男性 50) -
入選
妻思う ほんとは飲みに 行って欲しい
竹本朱美(愛知県 女性 46) -
入選
コロナ禍は 酒税が地元に 里帰り
けんちゃん(岐阜県 女性 26) -
入選
卓袱台に一升瓶が仁王立ち
チェミ〈1985〉(埼玉県 男性 35) -
入選
初孫の 知らせはずむは 祝い酒
谷山いくな(愛知県 女性 22) -
入選
冷酒と旬の小皿が待つ家路
篠田東星(栃木県 男性 81) -
入選
ネオン消え 飛べない蝶が 家に居る
wakame(熊本県 男性 69) -
入選
安酒を 銘酒のビンに 入れて飲む
シロー(広島県 男性 79) -
入選
家飲みで わかった呑屋の 高い酒
松本静男(北海道 男性 72) -
入選
ワクチンと 言って親父は 三本目
となみ(埼玉県 男性 61) -
入選
一夜干し あまりの旨さ 福五つ
おカド違い(大阪府 女性 81) -
入選
慣れたのは 家飲み慣れぬは WEB会議
だいちゃんZ!(大阪府 男性 46) -
入選
家業継ぐ決めた息子に酒を注ぐ
岸野由夏里(京都府 女性 45) -
入選
妻相手 二年目家飲み 飽きてきた
稲川正幸(岐阜県 男性 69) -
入選
とりあえず 映る場所だけ 片づける
脇田佳奈(愛知県 女性 38) -
入選
家飲みの車座全員背を向けて
八十日目(神奈川県 男性 81) -
入選
家飲みで知った娘についた虫
ばばりん(大分県 女性 62) -
入選
ダンナ飲み うらめしく思う 授乳中
高橋千尋(北海道 女性 30)
第10回 伍魚福家飲み川柳選者 渡辺美輪氏(川柳専門誌「現代川柳」編集長)
今年の家飲み川柳は4999句。過去最高の投句数だった昨年よりはやや減りましたが、長引くコロナ禍で疲弊した心にしみわたるような句が多く、胸を打たれました。テレワーク、ワクチン、ZOOM飲みなど、今の時代ならではの言葉もたくさん登場しました。おいしい伍魚福のおつまみと共に、今夜もほどよいお酒を楽しんでください。