第13回

伍魚福 家飲み川柳 入賞作品発表

渡辺美輪氏(第13回伍魚福家飲み川柳選者、川柳専門誌「現代川柳」前編集長)総評

 今回の総投句数は3288点と、昨年度よりやや少なめでしたが、良い作品が多く、入選を逃した中にも佳句がたくさんありました。また、封書やハガキ、FAXよりもメールやTwitter(X)、WEBでの投句が全体の6割近くを占めていました。郵便料金も値上がりすることですし、これもまた時代の流れですね。
 安いワインもビールも、家でじっくり飲めば極上の味。家族や友人とにぎやかに飲むもよし、大切な人とゆっくり飲むもよし。盃片手に仲間と語らうもよし、一人静かに味わうもよし。今夜も伍魚福のおいしいおつまみをお供に、もう一杯。

  • 最優秀賞

    AIよ 家飲みの幸 知ってるか

    難波安津子(岡山県 女性 56)
    作者コメント

    わが家では毎日、夫が仕事から帰ってくると、いそいそとつまみを出して2人で飲んでいます。一日の出来事を話しながら、おいしいつまみを食べつつ、ゆっくりと飲む時間が、私にとっては幸せです。そんな時、AIがどれほど優れていようと、この家飲みの幸は分からないだろうなあ…と。人として生まれてきて、家飲みの良さをしみじみと思いながら生きています。

    渡辺氏選評

    将棋の藤井七冠も勝負前には参考にしているという人工知能・AI。絵を描いたり文章を書いたり、創作の分野でも活躍して、いずれ人間を凌駕する作品も登場するかも。しかし、さすがのAIも家で飲むこの幸せはちょっとわからないでしょう。それともいつかAIも、伍魚福のおつまみの味がわかるようになるのかしら?

  • 優秀賞

    思い出を上映します家ビール

    徳道かづみ(東京都 女性 51)
    作者コメント

    家でビールを飲んでいるうちに、「あんなこともあった、こんなこともあった」と、脳裏に思い浮かべることを句にしてみました。自分の記憶の上映ですから、きっと少しずつ美化されていったりするのでしょう。また、家族でわいわいと、家庭で撮影したホームビデオを上映しつつ飲んでも楽しそうです。

    渡辺氏選評

    家族や友人、気の置けない仲間たちと家で飲むと、すぐに始まる思い出話。「ほら、覚えてる? あの時こんなことあったよね」「え? そうだっけ?」「覚えてないの? あの時は大変だったんだから~」 ビール片手にワイワイ語り合う楽しさは、かけがえのないものです。思い出を「上映」という表現がいいですね。

  • 優秀賞

    妻の酌 成分表に 愛とあり

    博之介(兵庫県 男性 52)
    作者コメント

    先日、妻に晩酌を付き合ってもらった時、「ねえ、今日のお酒は特別美味しいでしょ?」と、酒瓶の成分表を見せてきました。別にいつもと変わらいないじゃん、と思いながら、その成分表を見ると、妻の字で「米」を消して「愛」と書いてあるじゃないですか。「ねぇ?」と妻。自分は「何、馬鹿なこと書いてるんだよ~笑」と二人で大爆笑。とても良いひとときでした。

    渡辺氏選評

    「明日は休みだし、もう一杯欲しいなあ」「ダメよ。もう十分飲んだでしょう。これでおしまい」 そう言いつつ、妻は立ち上がる。「ちょっとぐらいいいだろうに…」 まあ、そりゃね。俺の体を思ってのことだと、わかってはいるけれど…。お酒は適量が一番です。成分表の「愛」を、存分に味わってくださいな。

  • 灘五郷賞

    一合の 晩酌夢を 太らせる

    けろね(大阪府 男性 78)
    作者コメント

    下戸の私の晩酌は一合で満ち足りほろ酔い気分で、例えば明日は家庭菜園に何を植えようか、孫が来たらキャッチボールや将棋の相手をしようかなど、色々と楽しい思いを巡らせ心を豊かにしてくれます。この至福のひととき一合の酒は私のこの上ない心のサプリです。

    渡辺氏選評

    大きくなったら何になる? 作家、博士、宇宙飛行士にパイロット。子供の頃は叶いそうもないような大きな夢をみたものだ。酒を吞んでいると、だんだん気が大きくなってくる。とうに忘れたはずの幼いころの夢が、胸の奥からムクムクと頭をもたげてくる。一度は無理だとあきらめたけれど、今ならまだ間に合うかもしれない。よし、ダメでもともとだ。もう一度、挑戦だけでもしてみよう。「夢を太らせる」という表現がいいですね。

  • 伍魚福賞

    揚げ銀杏 指の塩舐め もう一杯

    Midori(奈良県 女性 45)
    作者コメント

    おつまみを食べている時、おつまみが余ればお酒を足し、お酒が余ればおつまみを開封していると、飲み過ぎてしまいます。健康や予算のことも考え、「おつまみは1袋、お酒は1本まで」というマイルールを課しています。お酒は飲みたいけれど、おつまみがもうない、というときは、指先をペロリ。お酒を足す言い訳ができるのです。

    山中勧伍魚福社長選評

    伍魚福の「一杯の珍極」シリーズ一番人気の「揚げ塩ぎんなん」。2024年3月から「淡路の藻塩」使用に改良しています。「藻塩」は海藻と一緒に炊き上げてあるので、旨味があり、塩だけでもおいしいんです。というメーカーの思いが伝わったのか、そんな姿が想像できる、とてもうれしくて楽しい作品です。

  • 佳作

    ごめんねと 言えず帰りに ワイン買う

    佐藤和子(神奈川県 女性 55)
  • 佳作

    こっそりと 追加の酒を 冷やす母

    カイト(愛知県 女性 49)
  • 佳作

    年金の日には珍味を大人買い

    ほり・たく(千葉県 男性 51)
  • 佳作

    介護する母の寝息で割る梅酒

    井内雅仁(大阪府 男性 73)
  • 佳作

    いいことがあり家飲みの明るかり

    月川たるほ(兵庫県 女性 59)
  • 入選

    AIがお酒のあては伍魚福

    よっちゃん(兵庫県 男性 84)
  • 入選

    今のうち つまみ買い増す イカ不漁 

    うにどん(東京都 男性 56)
  • 入選

    家飲みで原価を知れば店遠く

    しらふ(千葉県 男性 53)
  • 入選

    アテ切らし 自販へ走る 息切らし

    やすよ(兵庫県 女性 41)
  • 入選

    本当はちょっとうれしい妻の留守

    カンちゃん(愛媛県 男性 73)
  • 入選

    両手から片手になった妻の酌

    未央柳(埼玉県 男性 80)
  • 入選

    健脚を肴探しで計る日々

    石田正流(大阪府 男性 68)
  • 入選

    新NISA 運用不発 家で飲む

    さんごしょう(愛媛県 男性 67)
  • 入選

    晩酌に 四時は早いか 大相撲

    中塚一郎(東京都 男性 74)
  • 入選

    酒、珍味 補正予算の 物価高

    中村登志子(大阪府 女性 75)
  • 入選

    家飲みの テレビはパリの 桟敷席

    江戸川散歩(千葉県 男性 72)
  • 入選

    自由課題爺のつまみのベスト10

    極楽とんぼ(青森県 男性 67)
  • 入選

    家飲みで 酔えば家内も かぐや姫

    減点パパ(大阪府 男性 65)
  • 入選

    荒れた手の 妻のお酌に ついほろり

    紫雲山(大阪府 男性 74)
  • 入選

    珍客に 珍味を出せば 長居され

    くずれ荘管理人(大阪府 男性 57)
  • 入選

    無課金で飲める家飲みつまみ付き

    めめ(東京都 女性 34)
  • 入選

    誰一人 取り残さない 飲み家族

    K・U(福島県 男性 66)
  • 入選

    家飲みで熟成させた夫婦仲

    汐海 岬(東京都 女性 52)
  • 入選

    飲み比べ食べ比べたり夜楽し

    宇多村順一(山口県 男性 75)
  • 入選

    枝豆の皮積み上げるエベレスト

    ぴーす(東京都 女性 68)
  • 入選

    とっくりを転しながら座談会

    澤田靖子(大阪府 女性 72)
  • 入選

    仏壇のお供え物もおつまみに 

    石部漂吉(東京都 男性 73)
  • 入選

    定額の減税分は酒に消え

    ばばりん(大分県 女性 65)
  • 入選

    家飲みにホッとオーバーツーリズム

    つべる(神奈川県 女性 31)
  • 入選

    絵日記に 家飲みのパパ 描く息子

    みなまる(山梨県 男性 56)
  • 入選

    ぎんなんのためにノンアル用意する 

    ゆみこ(大阪府 女性 62)
  • 入選

    伍魚福か これは2合じゃ 済まないぞ

    カジ(東京都 男性 77)
  • 入選

    終活を 済ませのんびり 二人酒

    やんちゃん(福島県 女性 63)
  • 入選

    よくハマる 「伍魚福沼」が ウチにある

    お酢(福島県 男性 61)
  • 入選

    「#家飲み」の つまみも顔も 加工品

    アリトルビット鱧(岩手県 女性 45)
  • 入選

    家のみや 寿司半額に 立ちつづけ

    繁田政春(東京都 男性 72)
  • 入選

    同業の 息子のグチに 進む酒

    老人生(神奈川県 男性 67)
  • 入選

    末期の酒あの世へ夫は千鳥足

    谷口ミサヲ(兵庫県 女性 81)
  • 入選

    一人酒 ふすまの隙間 5才の目

    はちみつみかん(大阪府 女性 57)
  • 入選

    珍味界 さきいか天が BIGボス

    すごい顔(神奈川県 男性 28)
  • 入選

    伍魚福を 非常食へと 推す旦那 

    中山清(熊本県 男性 51)
  • 入選

    持ち寄りで センスが問われ 気合い入れ

    彩来 美雨(東京都 女性 39)
  • 入選

    酔っぱらい 虎に翼で 飛ぶ記憶

    しんのすけ(埼玉県 男性 78)
  • 入選

    家族寝て妻の家飲み十五分

    大和ゆか(奈良県 女性 ―)
  • 入選

    「ぎょぎょふふをだすわ」と口癖まねる孫

    かめ太郎(神奈川県 女性 33)